【名もなき生涯】2020年公開

皆さんは映画の上映時間はどのくらいが理想ですか？僕は映画の種類にもよるところですが、1時間45分が理想だと思っています。しかし、10年に一本ぐらいは長くても納得の映画があります。テレンス・マリック監督の作品じゃなかったら僕も観てなかったと思いますが、今日の映画は3時間と長尺です。

舞台は第二次大戦下、ドイツの統治下にあったオーストリアの山と谷に囲まれた美しい村で暮らしていた実在の農夫フランツ・イェーガーシュテッターの半生が描かれています。

ナチスの侵攻とフランスの降伏などで戦況は落ちつきつつあるオーストリアののどかな村で、フランツ(アウグスト・ディール)と妻のファニ(ヴァレリー・パプナー)との運命的な出会いから映画は始まります。やがて結婚して子供にも恵まれ幸せに暮らすフランツでしたがヒトラーに忠誠を誓う事に疑問を抱いていきます。

信仰心の強いフランツは神父に相談しますが、その考えは村人全体にとっても危険なので口外しないようにと諭されます。やがてナチスから召集令状が届き、ヒトラーへの忠誠を拒んだフランツは収監され、残された家族にも徐々に村人の冷たい視線が向けられていきます、、、。

オーストリアの美しい自然を背景に、家族にもたらされる過酷な運命が描かれているのですが、ただただ悲しいだけではなくフランツの妻への愛、子供への愛、そして妻ファニの夫への思いがテレンス・マリック監督独特の映像で美しく奏でられています。

世界総右傾化の現代で、寡作で知られるテレンス・マリック監督がこのタイミングで世に送り出した思いは、エンドロールで流れるジョージ・エリオットの言葉で締めくくられています。